大相撲小言場所


秋場所を振り返って〜大の里が千秋楽決戦で安青錦を下す~

  今場所ほど先の読めない場所はなかった。横綱豊昇龍は休場。横綱大の里は初日勝ちはしたが土俵際すれすれの逆転勝利。横綱昇進を目指す霧島は序盤に高安、中盤に義ノ富士に敗れ、大関復帰を果たした安青錦は4日目から伯乃富士、豪ノ山、藤ノ川に体勢を崩されて3連敗。序盤に勝ち星を重ねた琴櫻も土俵際の逆転劇が多く中日から3連敗。一時は熱海富士が独走するかに見えたが、終盤、大関昇進の目安となる12勝に届かなくなる4敗目を大の里に完敗して記すと、そこからは大失速。
 元気がよかったのは藤ノ川。3大関全てに勝ち、大の里を追う態勢になったが、残念ながら圧倒されて優勝圏外に。美ノ海がよく健闘したが、終盤に上位との相撲で星を落とす。朝乃山もあと少しで優勝圏内に残るところだったが14日目に藤ノ川に敗れてチャンスを逸した。
 大の里は1敗を12日目まで守っていたが、霧島と琴櫻の両大関に連敗。体調不十分ながら持ち直した安青錦と千秋楽、相星決戦となった。ここで大の里は安青錦を圧倒し、1年ぶりの優勝を果たす。最終的には番付通りの結果になって丸く収まったけれど、横綱大関陣も決して盤石ではないというところを見せてしまった。特に横綱昇進を目指した霧島は緊張していたのが見て取れて、勝っていても「強い」と思わせる相撲がなく、終盤は失速してしまった。
 殊勲賞は高安が候補に挙がったが、千秋楽に負け越してしまい、大魚を逸した。敢闘賞は藤ノ川は文句なしだったが、美ノ海は9勝では物足りないので千秋楽に勝つこと、朝乃山も千秋楽に勝つこと、新入幕の寿之富士は千秋楽に勝って10勝したら受賞という条件付き。毎場所書いていることなのだが、条件をつけるなら最初からなしにすればよい。受賞させたいなら条件など付けなければよい。朝乃山と寿之富士は敗れて敢闘賞はもらえず。美ノ海のみ勝ってなんとか受賞。もし美ノ海が負けていたらあれだけ土俵を沸かせた力士がいたのに三賞は藤ノ川だけということになるところだった。低調な場所だったことは否めないけれど、三賞受賞者が2人だけというほどひどい場所でもなかった。
 技能賞は該当者なし。宇良は10勝し、内容も十分技能賞に値すると思ったのだが、選考委員の目には物足りなく映ったのか。謎である。序盤に5連敗したのに、中盤からの6連勝で盛り返した義の富士の名前が挙がらなかったのが残念。優勝争いに絡まなくとも、土俵を盛り上げた力士に三賞を与えていた時代が懐かしい。
 十両は優勝決定巴戦で北の若が勝ち、来場所の再入幕が期待できる。相撲ぶりも以前より良くなっているので、来場所以降が楽しみ。
 幕下筆頭の旭富士が勝ち越して来場所は待望の関取昇進。番付に載った段階で幕内クラスの力量があると言われていただけに、こちらも楽しみだ。
 相星決戦とはいえ12勝の優勝。三賞も2人だけ。横綱昇進を期待された霧島も大関昇進を期待された熱海富士も、心技体の「心」の部分で及ばず、一から出直しとなった。そういう意味ではいくぶん低調な場所だったと言えるだろう。藤ノ川の相撲に光明を見たが、相撲の激しさから怪我の心配が絶えない。ともかく10勝して大関昇進の起点となったので、来場所以降に期待したい。

(2026年9月27日記)


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